お茶漬けだったはずの朝にいきなりステーキを出されたら

電車の中で財布を家に忘れたのに気がつき
次の駅で降りる。

隣のまた隣の駅まで行って
半額のお惣菜をディグるはずだった。

ポケットには小銭しか入っていないから
隣の駅から歩いて帰ることにした。

駅の階段を降りていると
酔った父親とその息子が
一段一段ゆっくりと降りていた。

親子そろって
野球のユニフォームを着ていたから
父親はコーチ、息子は選手、という感じか。

父は完全に酒が回っている感じで
まだ小学生くらいの息子の肩に腕を回して
息子は父を支えていた。

そんな父が突然

「もしお茶漬けだったはずの朝にいきなりステーキ出てきたらどうする?」

そう息子に問うた。息子は黙った。

数段先から聞こえてきたこの質問に僕は考えずにいられなかった。

普段の朝はお茶漬けを食べている、としよう。

お茶漬けは胃腸の動きが鈍い朝っぱらからでもサッといける。

栄養素的には白米の炭水化物のみと不安が残るが
玄米に変えれば亜鉛、ビタミン、食物繊維を摂取することができる。

忙しい朝の時短にもなるから、申し分ない。

さっそく一カ月間分の永谷園のお茶漬けを買いだめして、この朝食スタイルを確立する。

そんなお茶漬けライフの31日目の朝に突然
いきなりステーキを出されたら?

難しい。

「おい、俺のお茶漬けはどこに行ったんだよ!」
となるか

「ほーほー、ステーキじゃん。頂きます」
となるのか。

―いや、ちょっと待てよ。

“いきなり”ステーキが出てくるのか?
それとも
ステーキハウスの「いきなりステーキ」なのか?

そう疑問に思ってすぐ
「いきなりステーキ」の広告が目に入る。

息子はラッキーだと、僕は思う。

「もしお茶漬けだったはずの朝にいきなりステーキ出てきたらどうする?」

こんな問いに出会えるチャンスは滅多にない。

不意な質問にもほどがあるし
よく考えても意味がわからない。

だって
お茶漬けとステーキ同じ文章中にあるのだ。

通常は同じ次元に存在しえない2つのエレメントが共存している感覚。

結局、その問いを考えながら
帰り道のコンビニでアメリカンドックを2つ買って帰宅。

216円。

「アメリカンドックの本体はあの棒についたカリカリした部分なんだよ」

昔に誰かが言っていたような気がする。

まったく大人になればなるほど

この世の中には
考えなければならないことが多すぎる。